組織において、如何にメンバー間のチームワークを発揮し、パフォーマンスを向上するかは永遠の課題です。 今回は、組織におけるチームワークをオンラインゲームを例にとって解説します。
チームワークの定義
株式会社グリッドスタジオでは、組織におけるチームワークを以下のように定義しています。
「メンバー全員が、チームのゴールを理解し、その実現のために自律的に役割を果たしている状態」
また、それを実現するための要素として、以下の3つを挙げています。
- 組織のゴールを理解する
チームワークを実現するためには、組織のゴールを全員が正確に理解していることが不可欠です。 会社全体の戦略と各組織に課せられた課題を、メンバー全員が把握していることが大前提となります。 - 自分とその周りのメンバーの役割を理解する
組織のゴール達成のために、自分がどのような役割を果たすべきかを理解することはもちろん、 他のメンバーの役割や、自分との関係性を理解することがより重要です。 - 自律的に役割を果たす
ゴールと役割を理解した上で、何をすべきか、誰と連携すべきかを自律的に判断し、行動することが求められます。
オンラインゲーム(MOBA)におけるチームワークの実践
MOBA(Multiplayer Online Battle Arena)では、世界中のプレイヤーが5対5のチームに分かれて対戦するオンラインゲームです。 各プレイヤーには役割が明確に分かれており、チーム内の連携が不可欠です。
主な役割の例:
- Carry(攻撃役):成長すると強力なダメージを与え、終盤に活躍。
- Support(支援役):仲間を支援し、敵の妨害を行う。
- Gank(奇襲役):敵の成長を妨げ、局所戦闘を有利にする。
- Siege(破壊役):建物の破壊を得意とし、戦線を押し上げる。
- Solo(単騎役):前線を維持し、耐久力に優れる。
ゲームにおけるチームワークの流れ
- 序盤戦
- 各プレイヤーが適切な位置に配置され、経験値と資金を集める。
- 支援役が攻撃役を守りながら成長をサポート。
- 単騎役が敵と対峙し、前線を維持。
- 中盤戦
- 破壊役が敵の建物を破壊し、戦線を押し上げる。
- 奇襲役が敵の主要メンバーを狙い、成長を妨げる。
- 終盤戦
- 集団戦が発生し、チームが連携して敵を撃破。
- 攻撃役が最大限に成長し、戦闘を優位に進める。
- チーム全体で敵の拠点を破壊し、勝利する。
ゲーム上では、言語の異なるプレイヤー同士が最小限のコミュニケーションでスムーズに連携しています。 「i play carry(攻撃役をやるよ)」 「create space(攻撃役が安全に成長できるようスペースを確保)」 「back(自分が犠牲になるから逃げろ)」
このように、短い言葉やシグナルで役割分担と連携を行い、勝利に向かって行動します。
この「刻々と変化する状況に対して、メンバーが自律的に連携し、自身の役割を全うする」という姿は、まさに組織においての理想的なチームワークの姿といえます。
ゲームとはいえ、なぜこのようなことが可能なのでしょうか。 要因としては、以下が挙げられます。
- ゴールと役割の明確化
- このゲームにおいての強いチームとは、単にゲームの操作が上手いメンバーが揃っていることではなく、ゴールと役割の共通認識が持てているメンバーが揃っていることにあります。
- 最終的に敵陣地を破壊し、勝利すること
- 今回の攻撃役は序盤極端に弱いので、支援役のみならず全員で攻撃役の支援を最優先すること
- 中盤戦はできるだけ時間稼ぎを行い、攻撃役が完全に成長するまで耐えること
- 終盤戦は攻撃役を軸に一気に攻め込み、一回の集団戦で勝ち切ること
流動的に変化する状況を見極めながら、序盤、中盤、終盤で、どのような状況が望ましいかをチーム全員が理解することが重要です。
- このゲームにおいての強いチームとは、単にゲームの操作が上手いメンバーが揃っていることではなく、ゴールと役割の共通認識が持てているメンバーが揃っていることにあります。
- 各メンバーが自分の役割を理解して、自律的に動くこと
- メンバーは誰でも、自分のロールを理解しています。ただし、流動的に動く状況においては、時に奇襲役が支援役に回る、単騎役が攻撃役に変わる、といった柔軟な役割の変更が求められます。
- これは、自分勝手に役割を変更するということではなく、ゴールに対して自他の役割の達成状況を理解し、足りていない役割を自律的に補いに行くという行動になります。
- それを “I gonna be carry” という限られたコミュニケーションで意思統一を図ることで、全員がお互いを補完しながら自律的に行動するという姿を実現しています。
これらの要素をメンバー全員が共通言語として持っているため、言葉の通じないメンバー同士が自律的、流動的に連携が取れるという結果になります。
組織におけるチームワークの仕組みづくり
上記の要素は、前述の通りオンラインゲームにおいては当たり前のことのように行われていることです。
それを、「仕事においてはそんな単純にはいかない」と諦めるのではなく、ジョブ型人事制度、評価制度、社員とのコミュニケーションを通じて
地道に浸透させていくことで初めて「真のチームワーク」が実現できます。
- 組織のゴールを理解する
- 各組織のKPIだけでなく、KPI達成に向けて各組織がどのような行動をすべきか、他組織とどう連携するかをメンバー一人ひとりが理解することが重要です。
- 自分とその周りのメンバーの役割を理解する
- 単なる職務定義書(Job Description)の内容を知るだけでなく、組織全体としてどのようなロールが存在し、自分の役割との関係性を全員が理解することで初めて「役割分担」が実現できます。
- 自律的に役割を果たす
- メンバー全員が自分の固定的な役割を担うだけでは、ゴールは達成できません。流動的に変化する状況やゴールに対して、メンバー自身が自身の役割の状況、および他者の役割の状況を把握し、足りていない部分があれば積極的に役割を拡張することが求められます。
また、評価制度においては、「元々定義された役割に対する達成度」とは別に「自身の役割をどの程度拡張し、他者の役割達成を助けたか」という点を積極的に評価することが必要となります(評価の比重としては、元々の役割:拡張した役割=8:2程度が現実的です)。
評価制度として明示的に自身の役割を超えた自律的な行動を評価することを示すことで初めて、メンバーの自律的な行動が実現されます。
- メンバー全員が自分の固定的な役割を担うだけでは、ゴールは達成できません。流動的に変化する状況やゴールに対して、メンバー自身が自身の役割の状況、および他者の役割の状況を把握し、足りていない部分があれば積極的に役割を拡張することが求められます。
株式会社グリッドスタジオでは、組織における真のチームワーク実現に向けて、制度設計、管理職研修、意識改革のための支援を行っていますので、是非お気軽にご相談ください。