近年、日本企業でも「ジョブ型人事制度」の導入が進んでいます。従来のメンバーシップ型からの移行は、適材適所の人材配置や専門性の向上を目指すものですが、導入後に組織内で新たな問題が生じるケースも少なくありません。
特に、日本の企業文化に根付いているすり合わせ型の業務推進、曖昧な役割分担を前提とした柔軟な対応、長期的な人材育成といった慣習と、ジョブ型人事制度が求める職務・職責の明確化が衝突する場面が増えています。
役割が明確になりすぎることで、メンバー間の協力や助け合いが阻害されるといった現象も発生しています。
しかし、ジョブ型人事制度の本質は、単なる役割の明確化ではなく、職務間の連携を強化し、組織全体のパフォーマンスを向上させることにあります。それにもかかわらず、なぜ連携が阻害される問題が生じるのでしょうか?
ジョブディスクリプションの本来の役割とは?
多くの企業で、ジョブディスクリプション(職務記述書)は、そのロールが果たすべき職務や責任、求められるスキルなどの定義に重点が置かれています。しかし、それだけでは組織全体の連携は強化されません。本来、ジョブディスクリプションには以下のような観点が含まれるべきです。
- 他のロールとの関係性の明示
そのロールが単独で機能するのではなく、どのロールとどのように連携すべきかを明確にすることが重要です。組織内でどのような登場人物(役割)が存在し、どう関わるのかを記載することで、連携の流れを可視化できます。 - インセンティブの相互作用の定義
各ロールが最大限のパフォーマンスを発揮するためには、他のロールの支援をどのように受けるべきか、逆に他のロールの成功を促すために何ができるのかを明示する必要があります。- 「あなたのインセンティブを最大化するために、他のロールはどのような役割を果たすのか?」
- 「他のロールのインセンティブを高めるために、あなたができることは何か?」
具体例:コンサルティングプロジェクトにおけるジョブ型の実践
一般的なコンサルティングプロジェクトにおいて、「ビジネスコンサルタント」の職責は、プロジェクトにアサインされ、自身の稼働率(Utilization)を上げることです。
ただし、自身の職責だけに集中すると、プロジェクトにアサインされるまで受け身で待つだけになってしまいます。しかし、その周りには以下のようなロールが存在します。
- アカウント営業:顧客に張り付き、顧客のビジネス上の課題・ニーズを明確にする
- ソリューションアーキテクト:顧客の課題に対して、自社のソリューション・知見に基づき解決案を構築し、顧客に提案する
- プロジェクトマネージャー:契約段階、デリバリー中、契約完了までプロジェクトの組成、実行に責任を持ち、適切なQCDを担保する
ビジネスコンサルタントは、自身の職責だけでなく、上記のようなロールと連携することで初めて、自身のインセンティブ(筋の良いプロジェクトを担当し、効率的に自身の稼働率を稼ぐ)を実現できます。たとえば、過去のプロジェクト事例を営業やアーキテクトに紹介し、自身のケーパビリティを理解してもらいます。そのうえで、実際に興味を持った顧客がいればその営業に同行し、筋のよいプロジェクト組成に関与し、そのままアサインされることが可能になります。
このプロセスを通じて、コンサルタントはより炎上リスクの少ない、かつ自身がやりたいプロジェクトにアサインされることで、結果的に自身のインセンティブ向上を狙うことができます。つまり、自身の職責ではない営業や提案活動に自律的に関与することで、ジョブ型の本来の価値を発揮することができます。
株式会社グリッドスタジオが提供するソリューション
ジョブ型人事制度は、「役割の明確化」と「連携の促進」の両方を実現するためのものです。しかし、運用を誤ると、単なる「個別の職務の線引き」にとどまり、協働を阻害する要因になりかねません。
本来のジョブディスクリプションは、個人の職務を定義するだけでなく、他のロールとの関係性や相互のインセンティブの仕組みを可視化することで、組織全体のパフォーマンスを向上させるものです。この視点を取り入れることで、ジョブ型人事制度をより効果的に活用できます。
株式会社グリッドスタジオでは、チームワークと人のつながりを促進するためのジョブ型人事制度の再設計および定着化をご支援します。
単なるジョブディスクリプションの作成支援にとどまらず、組織の実情に合わせた設計や運用の最適化、関係性の強化を重視した仕組みづくりをサポートし、企業がジョブ型人事制度を最大限に活用できるよう支援いたします。
